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2017. 12. 20
「美術の窓」田邊会長の連載 第3回
「美術の窓」vol.412 2018年1月号 P64〜P65

矛と盾

連載 第3回 聖火
 
 炭を思わせる深い黒の空間に浮かび上がる赤と青。ゾロアスター教の聖霊であるフラワシから着想を得たという今作。幻影のようなその形姿は、寿命を迎えて炎の中に身を投げて、再び炎の中から蘇る不死鳥のイメージを喚起する。言わば、生と死が交錯する刹那的な情景である。ざらついたマチエールが舞い散る火の粉を想記させて、燃え盛る炎の荒々しさを表す一方で、その鮮やかな色彩は強い煌めきを放ち、神秘的なオーラを醸し出す。火は古くから人類の生活に不可欠な存在であるが、ヤズドの沈黙の塔の聖火や比叡山の不滅の法灯のように、それは時として篤い信仰の対象となる。今作の激しく燃えて揺らめく炎は何者にも侵しがたく、永遠に力強く燃え続けるような存在感を放っている。火を媒介に彼岸と此岸を行き来する不死鳥という存在がこの火に聖性を宿らせる。