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2018. 03. 30
「美術の窓」田邊会長の連載 第6回
「美術の窓」vol.415 2018年4月号 P72〜P73

矛と盾

連載 第6回 自尊心
 
 土砂と絵具を何層も重ねて生み出される褐色の絵肌は古代壁画の趣すら感じさせている。首の長い姿を大胆にデフォルメし、画面いっぱいに描き出した軍鶏(しゃも)のイメージ。力強さを感じさせるボリュームのある体軀、赤とオレンジの線描で象られた足。何があろうと決して屈しない頑強さを窺わせる。

 作品の前に立ってこの軍鶏と対峙すると、まるで門番のように目の前に立ちはだかる仁王像のような印象を受ける。鋭い爪先で地面を捉え、根を張る大樹の如く確(しか)と二本足で立つ風貌は、まさに仁王立ちと呼ぶに相応しい。昂然と存在するこの一羽の軍鶏が滲ませる、揺るぎのない自尊心。鶏冠から肉髥にかけて彩る熱い血潮のようなヴィヴィッドな赤は、燃えたぎるプライドの顕(あらわ)れだろう。和を重んじ、謙遜を美徳とする世の中。他人に左右されず、信念を曲げず、己を貫く姿勢を我々に示しているかのようだ。

関連サイト:
田邊哲人 作品集