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2018. 12. 26
「美術の窓」田邊会長の連載 第15回
「美術の窓」vol.424 2019年1月号 P232〜P233

矛と盾

連載 第15回 日本的自然観
 
 大胆にナイフで塗り重ねられたモノクロームの色彩によって山岳のフォルムが浮かび上がる。シンプルな構成で、迫力満点のインパクトのある画面を生み出している。雪の積もった山の傍らで螺旋を描くように躍動する赤の線描。その激しさは吹き荒ぶ雪風のパワーを想起させ、自然の持つ力の偉大さを表象する。
 山岳は時に命を落とす者さえもいる厳しい存在であり、とりわけ日本では古代より宗教的世界観とも相俟って畏怖・畏敬の念をもって信仰を捧げる対象である。画家が描き出した雄壮たる姿には、われわれ日本人に通底する自然への想いが集約されているように想われる。さらに、燃えるような赤で象られた稜線が朝焼けを想起させ、例えば初日の出に代表されるような太陽あるいは自然崇拝のイメージをも強く引き寄せている。世界最高峰のヒマラヤ山脈に着想を得ながら、実に日本人らしい自然観で描き上げられた作品である。

関連サイト:
田邊哲人 作品集