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2019. 04. 24
「美術の窓」田邊会長の連載 第19回
「美術の窓」vol.428 2019年5月号 P110〜P111

矛と盾

連載 第19回 牡丹雪 ぼたんゆき
 
 安政7(1860)年3月3日朝、季節外れの雪に見舞われていた江戸。60余名の一行を引き連れて登城中の井伊直弼が水戸浪士ら18名に襲われて、桜田門外で殺害された。
 幾重にも金色の絵具が塗り重ねられた、独特な煌めきを放つ駕籠。時の大老の栄華を誇るかの如く絢爛豪華なこの駕籠を無慈悲に貫いた一本の槍が、この生々しい惨事の有り様を表象する。駕籠から引きずり下ろされ首を刎ねられたと伝えられる井伊の最期を物語る、隙間から溢れ出たかのような、どす黒く濁った影。その漆黒と目に眩しいほどの白雪との強烈なコントラスト。勅許を待たず開国を推し進め、安政の大獄で攘夷論者を粛清・・・・・歴史の転換期を生きた彼を鎮魂するかのように、牡丹雪がのそりのそりと降り頻る。

関連サイト:
田邊哲人 作品集