本部Top >> スポチャン NEWS >

2019. 11. 27
「美術の窓」田邊会長の連載 第26回
「美術の窓」vol.435 2019年12月号 P88〜P89

矛と盾

連載 第26回 共鳴
 
 少し首が長い徳利が二つ並んでいる。表面にはガラス質になってキラキラと長石の粒が煌めく。手に取ってみると、水滴のようにぼつぼつと浮き出たこの長石の感触が掌に伝わる。首や胴を伝う織部らしい深みのある釉彩の表情が非常に豊かで、様々な角度からじっくりと眺めたくなる。
 この徳利は「対」として作陶されたものだが同形ではなく、口縁のフォルムや緑釉の濃さ、それぞれに個性があるのが面白い。特に一見すると無造作にも見えるこの口は厚みや形状が異なっていて味わい深い。そして何より特徴的なのが胴部分に交互に配された円と十字の文様だ。切れ味鋭く線刻されたそれは、例えば甲骨文字のような、プリミティブなイメージを喚起する。穏やかな濃淡の緑釉の色彩と、勢いのある線の表情が重なりあい、互いを引き立てるように強く共鳴している。