本部Top >> スポチャン NEWS >

2019. 12. 27
「美術の窓」田邊会長の連載 第27回
「美術の窓」vol.436 2020年1月号 P214〜P215

矛と盾

連載 第27回 浄土
 
 作品を観た瞬間に、鮮烈な紫色に目を奪われる。ヴィヴィッドなその色彩の輝きと、複雑な表情をみせるごつごつとした絵肌が強烈なインパクトを放ってる。
 紫色の水面に浮かぶ睡蓮という画面の非現実感は、紅い睡蓮の海(タレー・ブア・デーン)とよばれる異国の湖の情景を想起させる。タイの東北地方に位置するその場所は、総面積約36平方キロメートルにも及ぶ。毎年12月から2月上旬にかけての早朝にはその広大な水面を染め上げるように赤い睡蓮の花が咲き誇る。その世界の幻想性に魅了され、浄土と称する者もいる。その花が開く刹那、一面に神秘的な情景が広がり、人々の心を惹き付けるのである。画家の描き出す重厚感のあるマチエールによる睡蓮の強い存在感。紫の水面の鮮やかさ。浄土的な世界観の壮大さを小さな画面で伝えている。