スポーツチャンバラ 田邊哲人会長のインタビュー
インタビュー記事No.7
「 基本動作 解説」

田邊哲人会長

前回に引き続き、基本動作の解説をお願いします。


  基本動作には、「面打ち」・「小手打ち」・「左右胴打ち」・「左右足打ち」・「突き」があるわけですが、「面打ち」は前回のインタビュー6で説明した通りです。

  次の「小手打ち」ですが、体勢は面打ちと同様です。ただし打った剣を持った拳の位置は、腰から水平に30センチ強伸ばします。(これは大人の場合です。子供の場合は、若干狭くなるはずです。)剣先は水平となるように注意して下さい。剣先が水平以下に下がっていたり、水平以上持ち上がっては行けません。体の移動は「面を打て」と同様です。

  次に胴打ちですが、胴打ちには「右から胴打て」と「左から胴打て」の2つがあります。しかし重複するために現時点では「右から胴打て」のみとしています。右からと言うのは、自分を主体として右上からと言う事になります。(左利きの人も、「右から胴打て」の号令の時は、右からとなります。「胴を打て」の号令の場合は、左右どちらからでも結構ですが、現行では右からの胴打ちが大方ですので、号令に従って下さい。)

  右から胴を打て   注意点として、右から胴を打つ場合、上段に振りかぶったときに剣先を若干右に傾け、斜めに振り下ろします。 そうしますと"しゃくり"の状態にならず、直線的に振り下ろすことが出来ます。振り下ろして止める位置は、やはり腰の高さで、拳と剣先が水平となります。つまりこの場合も剣先は上げもせず、下げもせずとなるのです。更に細部に言えば、振り下ろした時に勢い余って自分の体幅より剣先や拳が外にはずれないようにピタリと止めます。そして当然としてそのいずれも気・剣・体の一致活動の範疇であることは論を待たないのです。
  "しゃくり"とは、振り下ろした剣線が、弓なり(曲線)になる事です。理想としては、最短距離を直線的に刃筋を立てて振り下ろすことが良く、その違いは前から見ていると良くわかります。競技になるとこの部門は現行では「前見の審査」ですから、前から見るとその人の前から見た場合の癖が目立ちますね。「横見」または「斜め見」の場合はまた違った採点になる場合があるでしょうね。どういう事かと言うと、前からではどうしても見えなかった踏み込みの幅、送り足や残り足、横から見た姿勢等が、横からですと見えますね。ある大会では、残り足の選手が上位に入っていたこともありました。今後はこういう点も意識する事が肝要でしょう。また人間は左右の手の力は同じではなく利き手が強い(勝手と言う)ので、意識しないとどうしても"しゃくり"の状態になることが多いのです。まぁ、小太刀は片手動作なので、意識して手の握りを直せばこれは直ぐになおりますが。

左から足を打て   「左から足を打て」は、号令と同時に剣は左に傾け、振り下ろす動作は「胴打ち」と同じですが足の開き方に差があります。それは打つ部位が相手の膝から脛くらいとなりますので、足を大きく(2足長くらい)開き、当然、前傾となります。相手の脛の辺りまで振り下ろした後はピタッと止めます。その場合は自分の肩からそして拳、剣先が一線上になっているのが望ましいのです。注意点として、残った後ろ足(これは残り足と言い、足打ちの場合のみは、後ろ足はつれて前へ出さない事)の膝を折り曲げずしっかり伸ばすことにも注意してください。そして打ち終わった後は、一呼吸おき正眼(構え刀)に復します。 これらの打法の全ては、小太刀打法四則「押さえ打ち・扇打ち・回し打ち・掬打ち」の中の「押さえ打ち」です。従って、初期護身道の打法を良く理解していないと、この「押さえ打ち」ができないのではないかと思います。


  最後の「突け」は正眼に構えた剣先を若干下げ(5センチほど)、肘を真っ直ぐ伸ばし、剣を水平に10から15センチほど突き出して同時に一足長半前へ出ます。この場合の注意点は、姿勢を前後に崩さず、背を伸ばしたままの状態を保って行います。突いた後は、一呼吸置いて新たな力で引き抜き、直ちに正眼に復します。
よく見掛ける悪い癖は、突く前に剣を引いてその反動で突いたり、突いた剣先が上を向いていると言ったものがあるので注意してください。
  「元の位置」の号令で、前足におおむね90%以上の重心を掛けるようにして、後ろ足の力を抜き、前足のみで地を蹴りながら速やかに元の位置にかえります。戻った開始線で正眼に復し次の号令を待ちます。
この下がり方も初伝の護身道の「対刃物」の下がり足の習得がきちんと出来ていれば簡単な事です。
  「納め刀」の号令では、剣を右手でやや上方より左手に渡し、左手でつば元を握り、気をつけの姿勢に復します。

  「礼」は前回のインタビュー6と同じです。




基本動作のそれぞれのポイントを具体的にお聞きすると大変分かり易く、審判の基準も理解できて参考になりますね。
号令の掛け方では何かポイントはありますか?


  そうですね。号令のポイントは、予礼と動礼の区別をする事にあります。
分かり易く言えば、徒競走の「ようい―」の予礼と「ドン」の動礼と同様です。
「面を打て」は、「めんを―」の予礼で伸ばし、予め選手に気息を整えさせ用意をさせるということが必要です。
「打て」の動礼で選手は打突を実施します。
予礼と動礼の区別をはっきりとさせるには、動礼は強く大きく発声します。競技者が反応し易いような間のある号令が良い号令と言えますね。

基本動作は小太刀の他に、長剣フリー・長剣両手・二刀・棒・槍等があります。それらについても順に説明していきますのでお待ち下さい。

* 【 基本動作ビデオ2005年版 】はこちらからご覧下さい。



有り難うございました!
次回のインタビューもお楽しみに!

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