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2019. 08. 22
「美術の窓」田邊会長の連載 第23回
「美術の窓」vol.432 2019年9月号 P90〜P91

矛と盾

連載 第23回 日本人の美意識
 
 手回しの轆轤(ろくろ)で成形したフォルム。直線的でスマートな腰に、少し高めの割高台。水簸(すいひ)をしない、信楽の荒土を選んで用いた茶碗の肌は、ざらついた独特の手ざわりである。滋味深く鈍い光を放つような色合いは、「金茶碗」の名の通りに、一回につき二.五グラムの本金を混ぜた釉薬をかけて焼成することを三回繰り返して生まれた、こだわりのものだ。
 口縁は鋭く、ごつごつとした手ざわりだが、掌にはしっくりくるし、そのまましみじみと眺めていたくなる。惜しみなく本金を使いながらもその輝きの中にはどこか素朴さを湛えるようにも見え、夢中になる。華美な金色の煌めきに惹かれる心と、簡素で古びた趣を愛でるわび・さびの精神。まるでそうした日本人の美意識といわれる要素が融け合って一つになったような、実に不思議な茶碗だ。