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2020. 01. 26
「美術の窓」田邊会長の連載 第28回
「美術の窓」vol.437 2020年2月号 P90〜P91

矛と盾

連載 第28回 悉有仏性(しつうぶっしょう)
 
 鮮烈なバイオレットの背景に大きく描かれた大根。ザラザラとしたマチエールの画面に、大ぶりの葉の部分を大胆な色面で表現し、根の部分は赤系と白の絵具を複雑に重ねている独特の色彩が目を引く。作り手の愛情が込められた野菜。土がついたままの畑で収穫したての大根のイメージだろうか。でこぼこで折れ曲がったこの大根は、おそらく商品にならばず、きっとスーパーの店頭には並ばない。しかし、この大根には魂が宿っているような、不思議な引力めいたものが感じられる。大根と言えば、伊藤若冲の「果蔬涅槃図(かそねはんず)」で入滅する釈迦に見立てられた大根を想起する。あらゆるものが仏になり得る。この大根もまた仏なのではないだろうか。