スポーツチャンバラ 田邊哲人会長のインタビュー
インタビュー記事No.15
「 第33回全日本選手権大会を終えて 」

田邊哲人会長

第33回全日本選手権大会が6月24日に横浜市横浜文化体育館にて開催されました。


  大盛会でした。
年々、年を追う毎に参加人数も増え、各地方大会で目立っていた選手や、中央でも十分に活躍できるだろうと期待していた選手などの参加も多く、世界大会とはまた一味違う雰囲気の大会でした。
  全日本大会に出場できると言うことは、選手にとっても監督にとっても平等に与えられたプレゼンテーションの場ですので大いにこのチャンスを活かし、日頃のうさ晴らしや自己主張をして頂きたい。そこにスポーツの意味があるやに思います。着衣も正式ユニフォームやまた、古武士風あり野武士風ありチャイナドレス風あり阪神タイガースや楽天ありと、思い思いの服装で張り切って試合に挑む姿に、「これぞ流派を問わず、国を問わず」と言った面白さがあり、試合内容共々、観る人も満足したことでしょう。また全日本大会にもかかわらず、ロシアから4名の他、韓国、モンゴルなどの海外からも参加者がありました。これほど世界のサムライを虜にするスポーツは他にあるでしょうか?全員が自費参加ですからね。もちろん、審判も役員も。




海外からも参加があったのですね! 試合は如何でしたか?


  打突競技のグランドチャンピオン戦は、さまざまなカテゴリーでの優勝者同士の対戦ですから、それぞれ個性があって観ている人も面白かったでしょう。もの凄く盛り上がりました。やはりサムライの国、全日本選手権大会は半端な大会ではないと実感しました。ローカル大会ではこの迫力は出ないでしょう。やはり「井の中の蛙」ではダメですね。血湧き肉躍るとは正にこの事でしょう。
  今大会で目についたのは広島勢ですね。キャラクターが良かった。神奈川県の長谷部君も独特なスタイルで観衆を沸かせていました。打突グランドチャンピオンに輝いた山口優平君は、「絶対に負けない」という強い信念の戦いぶりで全体を制し、しかも2年連続ですから少しは威張っても(?)いいでしょう。

  基本動作は5月に開催された全国少年少女大会同様、四国勢が際だち、大人達もかないませんでした。これにはあらためて敬意を表します。基本動作高段の部 第2位となったヨーロッパチャンピオン、ロシアのYanis Poedinkov選手は「日本に来る度に素晴らしい基本動作を演武する子供達が1人ずつ増えている」というような感想を洩らしていました。 世界大会でもないのに、熱心なロシアや韓国、モンゴルからも率先して自費参加して来るのですから、彼らは精神的に裕福なのでしょうね。

  また今大会では審判団の編成に一考を要しなければならないと感じました。平素、各地区大会で開催している主たる競技種目の小太刀、長剣フリーの審判は、熟練度からまずまず合格でしょう。これらは、検査役の裁き方さえ堅実に実行できれば文句はないでしょう。
  しかし各地方大会等々では実施種目が少ない長剣両手、槍、棒、二刀、楯小太刀、短刀については、全日本大会に来て初めて審判をすることになってしまったコートもあった為、そのコートの審判団には大変にご苦労をさせた事と思います。主催者としては今後、この点を反省して長剣両手、槍、棒、二刀、楯小太刀、短刀の専門の審判を認定し、この競技を更にマイナーからメジャーに昇格するように育成していく方向です。

  例えば短刀の競技は当然、接近しての打突が更に複雑でスピードであるため、短刀専門の卓越した審判でなければ選手にも観衆にも不信感を持たれる事になってしまいます。また蹴りも認めているため、受傷事故等も予見できることも必要です。更に割り込み審判となるため、その体さばきも習熟しなければなりません。

  槍に関しても同様です。初一本や返突の見方、また一寸当て止めの原則ができず、槍先がいたずらに流れてしまうなど見苦しい試合が多く見受けられ、審判もやりにくいでしょう。試合中に審判が技術指導するわけにいきませんから。選手側の槍の使い方も今一つ会得できていない様です。

  二刀や楯小太刀は4つの得物が複雑に交差するために更に審判からは見えにくく、瞬間の判断が難しいこととなります。

  これらは特別種目、または異種試合のワンポイントアドバイスをするとすれば、審判は、主眼と従眼(副眼)という事を念頭に置くと良いですね。即ち主眼・従眼とは、眼の動きだけを言うのではなく心のあり方の事であり、実際には見えていない側を裏と言いますが、この裏側に80%の主眼を置き、表側(実際に見えている側)を20%の従眼で見るぐらいで丁度良いバランスになります。実際に私はそのように見ています。日常生活では目につくものを何気なく見ていますが、審判となるとそれは、表側のみを見ると言う意味になります。この偏りを早く正さなければやがて癖となって固定してしまい、「強情を張る」と言うような自体となるのです。これは審判のみならず監督や観衆も含め言える事です。
更に表側のみで判定している審判は、選手の心が見えず、アピールやボディーランゲッジも読み取れず、従って選手が異議申し立てをする挙手の予測もできません。これでは選手も観衆も白けてしまい、試合そのものの価値を下げる結果となります。この様に思い込みに偏った審判を続けていると、「あの審判では試合をしたくない」と言った不満も出てくるでしょう。
とにもかくにも、物事には裏表があるという事を心得、「自分が見えている表面だけが全てであり絶対である」などと「思い込み」をする事いささかなく、常に冷静且つ慎重に公平感を持印象付けるように心掛けることが必要でしょう。審判に公平感そして信頼感が欠けていたら試合にならないですからね。

  長剣両手は、殊の外、相打ちが多いですね。打ち込んでくる相手を巧くかわす事のできる人もいますが、ほとんどは打ち込んでくる相手にこちらも応戦し、多くの場合が相打ちとなります。これは初心者と有段者が戦ったとしても同様です。剣道経験者同士なら剣道の戦い方がありますが、スポチャンでは剣道未経験の人と対戦しますので、どこにでも自由に打ち込んでくる相手に応戦する形となり、相打ちとなるのです。そういう試合の審判は、スピードも速く判断をつけるのがなかなか難しいですが、利剣は一本しかないので、いずれの競技も切っ先三寸をよく注視していると答えは自ずと見えてきます。

11月の世界大会までには、これらの一級の審判員を育成していくことも私の責任だと考えています。各種目に専門の審判員は5,6人〜10人くらい必要だと考えています。 今後の日程として下記の様に講習・検定会が決定しています。基本動作1級の他、長剣両手、槍、棒、二刀、楯小太刀、短刀の一級審判講習・検定を実施します。是非、専門的な教育を受け、何人も納得のいく「この審判がそう言うなら仕方ないだろう」と思われるような信頼され安定した審判員となるよう、お互いに頑張りましょう。

予定されている講習会
8月5日九州地区講習会(福岡県)(担当) 光山裕一郎 (TEL/FAX) 092-982-7732
9月9日近畿地区講習会(大阪府立体育館)(担当) 柚岡一禎 072-483-2747(近畿連絡協議会)
9月22日東北地区講習会(青森県)(担当) 木村英敏 0178-52-7707
10月21日中国・四国地区講習会(岡山県)(担当) 河田昇


  第33回世界選手権大会は、11月4日に横浜文化体育館にて開催されます。世界20ヶ国以上の国から参加選手が集まる大イベントです。大いにパフォーマンスできるよう選手のみならず、監督、審判の皆さんにも日々努力、精進して頂きたいと思います。

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ありがとうございました。
次回のインタビューもお楽しみに!

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